学会概要
利益相反に関する細則
(目的)
- 第1条
- 一般社団法人日本心臓血管麻酔学会(以下当法人という)の事業遂行において、公平性、信頼性を確保するためには、利害関係が想定される企業等との関わり(利益相反)について適正に対応する必要がある。この細則は、これら利益相反について透明性が確保され、適正に管理されることを目的とする。
(定義)
- 第2条
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本細則における用語の定義は次のように定める。
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利益相反(Conflict of Interest:COI)
広義の利益相反は、「狭義の利益相反」と「責務相反」(注1)の双方を含み、「狹義の利益相反」は、「個人としての利益相反」と「組織としての利益相反」の双方を含んでいる。
本細則では、基本的に「狭義の利益相反」の中の「個人としての利益相反」(以下「COI」という。)を中心に取り扱う。
COIとは、具体的には、外部との経済的な利益関係等によって、公的研究で必要とされる公正かつ適正な判断が損なわれる、又は損なわれるのではないかと第三者から懸念が表明されかねない事態をいう。
公正かつ適正な判断が妨げられた状態としては、データの改ざん、特定企業の優遇、研究を中止すべきであるのに継続する等の状態が考えられる。
(注1)責務相反とは、兼業活動により複数の職務遂行責任が存在することにより、本務における判断が損なわれたり、本務を怠った状態になっている、又はそのような状態にあると第三者から懸念が表明されかねない事態をいう。 -
経済的な利益関係
「経済的な利益関係」とは、研究者が、自分が所属し研究を実施する機関以外の機関との間で給与等を受け取るなどの関係を持つことをいう。
「給与等」には、給与の他にサービス対価(コンサルタント料、謝金等)、産学連携活動に係る受入れ(受託研究、技術研修、客員研究員・ポストドクトラルフェローの受入れ、研究助成金受入れ、依頼試験・分析、機器の提供等)、株式等(株式、株式買入れ選択権(ストックオプション)等)、及び知的所有権(特許、著作権及び当該権利からのロイヤリティ等)を含むが、それらに限定はされず、何らかの金銭的価値を持つものはこれに含まれる。なお、公的機関から支給される謝金等は「経済的な利益関係」には含まれない。
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利益相反(Conflict of Interest:COI)
(対象者)
- 第3条
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本細則の対象者は、COI状態が生じる可能性のある以下の者および生計を一にする配偶者、及び一親等の者に対し適用される。
- 本学会会員(定款第5条に定める会員)
- 本学会学術集会ならびに本学会学会誌での発表者
- 常任理事会出席者および学術集会会長、社員、委員会委員長、学術委員会部会責任者、編集委員会委員
(対象となる活動)
- 第4条
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本細則の対象となる活動は以下のとおりとする。
- 本学会学術集会や本学会が主催、共催するセミナー等で発表する場合。
- 本学会学会誌に発表する場合。
- 本学会員が、市民に対する公開講座等で発表する場合。
- 本学会員が、本学会からの助成金等に基づいて研究を実施しようとする場合。
- 常任理事会、学術集会時、学会誌の編集作業時。
- その他本学会が関与するすべての事業活動時。
(申告すべき事項と金額)
- 第5条
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申告すべき事項と金額等について、次のように定める。
- 企業や営利を目的とした法人、団体(以下、企業等、という)の役員、顧問職の有無、1つの企業等から、年間100万円以上の報酬を受け取っている場合について、その企業等の名称と金額。
- 株の保有の有無
1つの企業等の株式から、年間100万円以上の利益を取得した場合及び当該発行済株式数の5%以上保有している場合について、その株式名と取得金額及び株式数。 - 企業等から、特許権使用料として支払われた金額のうち、1つの特許権使用料として年間100万円以上の場合について、その企業等の名称と金額。
- 企業等から、日当・出席料・講演料等として支払われた金額のうち、1つの企業から年間100万円以上の場合について、その企業等の名称と金額。
- 企業等から、原稿料(執筆料)として支払われた金額のうち、1つの企業等から年間100万円以上の場合について、その企業等の名称と金額。
- 企業等から、研究費として支払われた金額のうち、1つの臨床研究に対する総額が年間200万円以上の場合について、その企業等の名称と金額。
- 企業等から、奨学寄付金(奨励寄付金)として支払われた金額のうち、1名の研究責任者に対する総額が年間200万円以上の場合について、その企業等の名称と金額。
- 1つの企業等から受けたその他の報酬等(研究とは直接無関係な旅行,贈答品等)が、年間30万円以上の場合について、その企業等の名称と金額。
(利益相反の申告・開示・公開)
- 第6条
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下記対象者は、以下の場合に応じ、COIの申告(当法人への届け出)、開示(第5条の情報を審議するために資料を利益相反委員会、常任理事会に提示すること)、公開(第5条の情報の全部または一部を公にすること)を行うこととする。
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本学会学術集会や本学会が主催、共催するセミナー等で発表する場合の発表者
(ア)発表内容に関連する企業等との関係で、抄録提出日を基準として過去3年間において、1年でも第5条に該当している時、その期間を示して申告をする。但し、当法人の常任理事会が3年以上前の期間について申告を必要とすると議決した時、対象者は,指定された期間について申告をする。
(イ)共同研究者及び共同発表者は、当法人の会員か否かを問わず、前項に該当する時、その期間を示して申告をする。
(ウ)共同研究者及び共同発表者が第5条に該当するかどうかを調査し、同条に該当する時は、共同研究者及び共同発表者が申告をなすことにつき、責任を負う。
(エ)第5条にもとづく申告をなした時、発表スライドあるいはポスター等に、利益相反状態にある企業等の名称を表示する。 -
本学会学会誌への発表者(原著と症例報告に限らず、すべての発表とする)
(ア)共著者を含むすべての著者は、COIの有無を表明する。
(イ)自己申告書は、第5条に該当した場合、当学会に申告する。
(ウ)第5条に該当した場合は、企業名等を公開し、公開方法は、当学会投稿規定に従う。 -
本学会員で、市民に対する公開講座等で発表するもの。
第1項(ア)から(エ)に準ずることとする。 -
本学会員で、本学会からの助成金による研究を実施しようとする者
(ア)上記第4項の対象者は、本学会への申請時に、研究と関連する企業等との関係で、その研究の公募が開始となる時を基準として過去3年以内において第5条に該当している時、その期間を示して申告をする。但し、当法人の常任理事会が3年以上前の期間について申告を必要とすると議決した時、対象者は,指定された期間について申告をする。
(イ)第4項の対象者は,その者の配偶者及び一親等以内の親族,並びに収入・財産を共有する者が、前項に該当するかどうかを調査し、該当する時は、第4項の対象者がその旨の申告をする。 -
常任理事、監事、学術集会大会長、社員、委員会委員長、学術委員会各部会責任者、編集委員会委員
(ア)常任理事会、学術集会大会長、社員、委員会委員長、学術委員会各部会責任者、編集委員会委員が業務を遂行する場合を対象とする。
(イ)上記第5項の対象者は、当法人が行う事業に関連する企業等との関係で、第5条に該当している時、就任時及びその後は各年度に申告をする。 但し、就任時は就任年度から過去2年度について、各年度に申告する。
(ウ)第5項の対象者は、在任年度途中において、第5条に新たに該当した場合、6ヵ月以内にそれを申告する。
(エ)第5項の対象者は、その配偶者、一親等以内の親族及び収入・財産を共有する者が、第5条に該当するかどうかを調査し、該当する時は、第5項の対象者がその旨の申告をする。
(オ)第5項の対象者は、第5条にもとづいてなした申告について、所定の手続を経て開示・公開されることにつき、予め同意する。
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本学会学術集会や本学会が主催、共催するセミナー等で発表する場合の発表者
(利益相反委員会の設置)
- 第7条
- 当法人のCOIについて適正に管理するため、利益相反委員会を設置する。
(利益相反委員会の業務)
- 第8条
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利益相反委員会は以下の業務を行う。
- 常任理事会の諮問を受け、常任理事会に対し答申を行う。
- 前項の答申を行うために必要な調査および聴聞等を行うことができる。
(開示)
- 第9条
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当法人は、下記の事由が生じた場合、常任理事会・利益相反委員会に対し、当該対象者の利益相反自己申告書を開示する。
- 常任理事会が、当該対象者に関し社会的・法的問題が生じ、開示の必要性があると認めた時。
- 会員並びに非会員の者が常任理事会に対し、当該対象者を疑うに相当と認められるCOI事実があることを、書面をもって指摘し、常任理事会がこれを相当と認めた時。
(常任理事会の責務)
- 第10条
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常任理事会の責務
- 常任理事会は前条の場合、当該対象者の利益相反自己申告書の開示を受け、その疑義を審議し、判断を行う。
- 常任理事会は、前項の判断をなすにあたり必要と認める時、利益相反委員会に対し、諮問をなすことができる。
- 常任理事会は審議の途中において、第6条の第1項記載の対象者の利益相反自己申告につき、重要かつ重大な違反がある虞があり、並びに緊急措置として必要と認めた時、同対象者に対し、学術集会等の発表・講演を中止させる措置をなすことができる。
(関係書類の保管)
- 第11条
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関係書類の保管
- 当法人は、利益相反自己申告書の管理者を理事長と定め、同申告書を事務局にて厳重に保管する。
- 保管期間は発表終了後または研究終了後または任期終了後5年間とする。
- 保管期間が終了した時、理事長は、その監督下で利益相反自己申告書を廃棄処分する。但し、保管期間終了時に、当該申告について疑義もしくは社会的・法的問題が生じている時は、常任理事会の議決により、当該対象者の利益相反自己申告書の廃棄処分を保留する。
(審議等に対する利益相反)
- 第12条
- 常任理事会及び利益相反委員会が第8条、第9条、第10条の審議、諮問、答申等をなすにあたり、常任理事及び利益相反委員会の委員が当該対象者である時、その者は審議、諮問、答申等にあたってはならない。
(違反者への措置)
- 第13条
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常任理事会は、申告が第5条の不遵守・不履行に該当すると判断した時、その程度に応じて、期間を定めて次の措置を取ることができる。
- 当該申告者に対し、正確な申告をなすよう指導、勧告し、今後正確な申告をなす旨の誓約書を作成させること。
- 当法人が開催する学術集会等での発表・講演の禁止。
- 当法人の刊行物への論文等の掲載の禁止。
- 当法人の学術集会会長への就任の禁止。
- 当法人の常任理事会、理事・評議員会、委員会への出席の禁止。
- 当法人の会員になろうとする者に対し、不承認をなすこと。
- 当法人の会員から除名することにつき、常任理事会に議決を求めること。
(措置に対する不服申立)
- 第14条
- 前条の措置を受けた者は、当法人に対し、2週間以内に不服申立 をすることができる。当法人は、不服申立を受理した時、利益相反委員会に対し再諮問を命じ、常任理事会の審議を経て、その結果を不服申立者に通知する。
(細則の変更)
- 第15条
- 本細則の改正・廃止は、常任理事会、理事・評議員会の承認を受けなければならない。
附則
- この細則は 2015年 10月 9 日から施行する。
2016年5月27日改訂